変体仮名の字母と字形「い」

二日目は「い」。いろは仮名の字母は「以」だが、同字母の変体仮名が写研に二つある。脈絡の繫がったものと切れたもの。

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写研の変体仮名は築地活版の見本帳からトレースしたものと思われるのだが、この字についてはなぜ二つにしたのかわからない。築地活版製造所の見本帳でも二種類の「い(以)」を持つものがあるわけだが(三号に二例ある)。

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「以」から「い」までに、二つの中間形を置くのは無理がある。脈絡の繫がりはデザイン差の範囲だろう。

といって、デザインの大きく違う住基の形には納得できない。

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鋳造活字では他の字母はないが、書道仮名手本では、「意」「伊」「移」「五」がある。ただ「意」は「お」とも読めるので、仮名として微妙ではあるが使われてきたものだから仕方がない。

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住基仮名でこれに対応するものは、

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の二つ。一見して筆法がおかしいことがわかるだろう。「伊(ac04)」など一体どう書いたらこうなるのか。

「移」は結構見かけるのだが、住基にはない。

住基仮名にはさらに三字が「い」の変体仮名として並んでいる。

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しかし、これは「井」「為」「遺」、つまり「ゐ」だ。「ゐ」を「い」に統合されるのはちょっとつらい。しかも「居」だけは「ゐ」の位置に置いてあるのだから訳がわからない。この三字は「ゐ」の項へ移動しなければ。