変体仮名の字母と字形「う」
三日目の「う」を検討する前に、方針の確認を。
Unicodeには、変体仮名の符号化提案がオランダの個人から出されている(http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n3698.pdf)。この提案のレパートリーと字形は「今昔文字鏡」の変体仮名と一致している。
一昨年、内田明さん(@uakira2)と協力して作成したPDFでは、この提案のレパートリーも収録した。
ただ、今回の検討では住基仮名に重点を置いている。
日本のナショナルボディが、住基漢字に続いて住基仮名をUnicodeに押し込む流れができたという噂があるからだ。
これまでも、またこれからも力説するが、住基変体仮名はレパートリーもグリフも筋が悪過ぎる。
PDFでは今昔文字鏡、住基、活字見本帳、書道仮名手本をベースに変体仮名のレパートリーと代表字形を探る試みをしたのだが、今回さらに住基仮名の批判的検討を行う所以である。
さて、「う」の字母は「宇」。同じ字母からの活字変体仮名を見ると、印刷局の二号、三号には二種類ある。
築地活版製造所はこんな感じ。右端は写研。
「宀冠にう」のような形をしているので、「う」の字母は「于」ではないかと異端の説を立ててみたくなるが、「于」の草書が「う」となった例も見ない。
住基の同じ仮名は、
筆脈の繫がりに難がある。
活字の「う」は同字母のものだけ。
「有」を字母とするものは、書道系(2種)の他、文字鏡と住基にある。文字鏡は一般化しづらい形だし、住基のものは筆勢が見えず、なぞり書きの体。
「雲」を字母とするものは文字鏡と住基にあるが、仮名になり切れていない。
書道系の「雨」「烏」「憂」も掲げておく。