二重引用符の“double quote”と〝ノノカギ〟について(2)

もうすぐツールドスイスが始まる。ということで、

http://www.tourdesuisse.ch

公式サイトのURL貼っときますね。って、突然なんだという話ですが、このサイト、お国柄でドイツ語、フランス語、英語の3ヶ国表示なのである。
で、昨年のレース後のインタビューを3ヶ国語で抜き出してみた。

Cancellara only 16th
Local Swiss hero, Fabian Cancellara, started the race amid resounding cheers from the huge number of spectators who had turned out. (略) “It’s not much use to me but I have to be satisfied with it. The wind didn’t play ball, and for the first few kilometres, it felt like I was pedalling backwards,” said Cancellara.


Cancellara seulement à la 16ème place
C'est sous les acclamations des nombreux spectateurs que le héros local, le Suisse Fabian Cancellara (RadioShack), prit le départ. (略) « Ça ne change rien au résultat, mais il faut faire avec. Le vente n'a pas été de la partie, les premiers kilomètres, j'avais l'impression de pédaler en arrière », explique Cancellara.


Cancellara nur auf Rang 16
Unter grossem Jubel der zahlreichen Zuschauer wurde der Schweizer Lokalmatador und Mit-Favorit um den Sieg, Fabian Cancellara (RadioShack) ins Rennen geschickt. (略) „Damit kann ich mir nichts kaufen, aber ich muss damit zufrieden sein. Der Wind hat nicht mitgespielt, die ersten Kilometer habe ich gemeint, ich fahre rückwärts“, so Cancellara.


つくづくいい時代になったものだと思う。Unicodeのおかげでフランス語もドイツ語もちゃんと表示できるのだから(読めるわけじゃないけど)。

このサイト、教科書通りの引用符の遣い分けをしてくれているので助かる(どこもそうとは限らないので)。

英語では “ ” (LEFT DOUBLE QUOTATION MARK + RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK)
フランス語では « » (LEFT-POINTING DOUBLE ANGLE QUOTATION MARK + RIGHT-POINTING DOUBLE ANGLE QUOTATION MARK)
ドイツ語では „ “ (DOUBLE LOW-9 QUOTATION MARK + LEFT DOUBLE QUOTATION MARK)

「LEFT」と名付けられたものを右側に使わねばならないドイツ語の無念さは置いておいて、おやっと思うのがフランス語の「j'avais」あたりのアポストロフィ。英語の「It’s」と違うものを使っている。同じでいいのだけれど、フランス語の場合、引用符に「‘ ’」でなく「‹ ›」を使えるから「'」はアポストロフィ専用で大丈夫ということかもしれない。

と、話が先回りしてしまった。今回は「dumb quote」の話。
Unicodeの最初にあるU+0021からU+007EはLatin-1。これはasciiと同じ文字。ここに「"」U+0022 QUOTATION MARKと「'」U+0027 APOSTROPHEがある。
昔々文字コードがascii以外信用できなかった時代があった(今だって場面によってはそうかもしれない)。安心な通信のためには、似たような記号は同じものとして扱うしかなかった。
だから、「"」は「“」(LEFT DOUBLE QUOTATION MARK)と「”」(RIGHT DOUBLE QUOTATION MARK)と「″」(DOUBLE PRIME)を兼ね、「'」は「‘」(LEFT SINGLE QUOTATION MARK)と「’」(RIGHT SINGLE QUOTATION MARK)と「′」(PRIME)にさらに「APOSTROPHE」まで背負わされていた。
ちなみに「PRIME」と「DOUBLE PRIME」はJIS X 0208では「′」(1-76 分)と「″」(1-77 秒)と定められていて、1-75の「°」(度)に続いているから角度の単位として使う想定だった。まあ、当然時間の単位の「分・秒」にも使われてしまうわけだし、英米では「フィート・インチ」を表したりもする。〝ノノカギ〟をJIS X 0213で「ダブルミニュート」っていうのは「double minute」だろうから、「ミニュート(minute=分)」のダブルであって「秒(second)」ではないという苦しい話となる。余談続きに「A′」(A PRIME)は日本では「えーだっしゅ」と読むので混乱はさらに続く。

 

閑話休題。「dumb quote」は「まぬけ引用符」と呼ばれて非常に評判が悪い。
例文をひとつ。
He said “I’m not a ‘cherry’ boy.”

これをasciiだけで書けば、
He said "I'm not a 'cherry' boy."

となる。タイプライターでもこう打っていた(それどころか、1とlを共用していた)。これが「dumb quote」。

で、この2行をAdobe InDesign CS6のドキュメントに「配置」すると……

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あやや、文字化けしてしまった。そういえば「配置」コマンドには「読み込みオプション」というものがある。それを開いてみると……

f:id:koikekaisho:20140611192951p:plain

推奨:ShiftJIS 83pv
これがデフォルトでは化けるのも当然。
これを「Unicode UTF8」にして読み込むと……

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化けない。あれ、でも同じオプションに「英文引用符を使用」というのがある。
これにチェックを入れて読み込んでも、変わらない。
実は読み込む前に文字パネルの「言語」という項目が「日本語」でなく「英語:〇〇」になっていれば……

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このように変換してくれる。方向もうまくいってる。賢いじゃないですか。

さて、次は縦組の場合に……おっと仕事が来た。以下は次回。