二重引用符の“double quote”と〝ノノカギ〟について(4)

さて、おさらいしておくと、日本語の横組の場合、使われるのは3種類。

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そして縦組は、

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広告でクライアントからのいじれない原稿を組む場合に、縦組のところに“天然”なんてものが来るとどうするのか。
試しに組んでみると、

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こんな苦労があるのかもしれない。
現場の苦労といえば、原稿として「"輝き"のナントカ」やら「”驚き”の黒さ」やらとなあんにも考えていないテキストデータが届くのは日常茶飯事なのではあるが。

 

DTP用のOpenType Font(日本語)には“double quote”と〝ノノカギ〟がどれだけ入っているかという話に移る。
まずはAdobe InDesignCS6の字形パネルで「"」「“」「”」「〝」「〟」について、Std、Pro、Pr6Nそれぞれの「選択された文字の異体字を表示」を見る。

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Proフォントが大変なことになっている。関係者全員集合!状態で、選びホーダイ(ただし結果は保証しません)なのだが、Pr6Nフォントだとスッキリする。AdobeJapan1-4時代には「"」から「“」「”」「〝」「〟」すべてにリンクが張られていたのに、AdobeJapan1-6では「"」は「"」だけで完結し、「“」「〝」でひと組、「”」「〟」でもうひと組のリンク系ができていることになる。なお、AdobeJapan1-4の後にこれの関係で追加されたCIDはないので、Pr6Nで「関係者」が増えてはいない。

「"」系のCIDは、
3 quotedbl
8007 quotedbl.full
8722※ quotedbl.vert
ここまでがStd
9446※ quotedbl.italic
12087 quotedbl.half
(CIDの後の文字列はフォント制作アプリケーション『Glyphs』の「NiceName」。※の付いたものは上に掲げたAdobe InDesignCS6の字形パネルでは出てこなかったもの)

「“」「〝」系のCIDは、
108 quotedblleft
423 quotedoubleprimeReversed.half
503 quotedblleft.half
672 quotedblleft.full
7608 quotedoubleprimeReversed
7956 quotedblsharpleftalt.full.vert
8277 quotedblbotleft
8279 quotedbltopleft
8827※ quotedblleft.vert
ここまでがStd
9551※ quotedblleft.italic
12080 quotedblsharpleftalt.half
12084※ quotedblleft.symbol
12169 quotedblsharpleftalt.full
13312※ quotedblsharpleftalt.half.vert
13316※ quotedblleft.symbol.vert

「”」「〟」系のCIDは、
121 quotedblbase
122 quotedblright
233 quotedblright.half
424 lowquotedoubleprime.half
673 quotedblright.full
7609 lowquotedoubleprime
7957 quotedblsharprightalt.full.vert
8278 quotedblbotright
8280 quotedblbase.full
8841※ quotedblright.vert
ここまでがStd
9564※ quotedblbase.italic
9565※ quotedblright.italic
12081 quotedblsharprightalt.half
12085※ quotedblright.symbol
12170 quotedblsharprightalt.full
13313※ quotedblsharprightalt.half.vert
13317※ quotedblright.symbol.vert


まあ、これらの使い分けに頭をひねる必要はないのだが、「NiceName」とAdobe InDesignCS6の字形パネルの情報からそれぞれのCIDが作られた理由を推測してみよう。
「"」はasciiにあり、JIS X 0208にもあったから、「欧文用=3」と「全角和文用=8007」を用意し、また縦組をフォントの機能で実現しようとするアプリケーションのために、「縦用字形=8722」が必要だった。そしてDTPのために「半角和文用=12087」が追加された。「イタリック字形=9446」を和文フォントに入れる必要があった理由はよくわからない。
「“」「”」はJIS X 0208にあったが、Unicodeの「U+201C」「U+201D」とリンクされたため「欧文用=108,122」、「全角和文用=672,673」、「縦用字形=8827,8841」、「半角和文用=503,233」「イタリック字形=9551,9564」が生まれた。ドイツ式の引用符のための「下付99形=121」とそのイタリック「9565」も入れた。
「〝」「〟」はJIS X 0208にはなかったが、IBMの文字セット由来でNECにもWindowsにも、Macの83pvにもあったので、「全角和文用=7608,7609」、「半角和文用=423,424」、「全角縦用=7956,7957」、「半角縦用=13312,13313」が作られた。
ここまではわかる。
「8277,8278」の組は何なのだろう。Unicodeとの対応はない。「8279,8280」も謎だ。Unicodeとの対応はない。Adobe InDesignCS6の字形パネルで見る限り〝ノノカギ〟とリンクされているが字形は「“ ”」で、それが仮想ボディのどの位置にあるかの違いのようだ。
「12080,12081」は「上上ノノカギ・直線ダブル引用符の半角和文用」で、「12169,12170」は「上上ノノカギ・直線ダブル引用符の全角和文用」。
「12084,12085」とその縦用字形らしい「13316,13317」は〝ノノカギ〟だが、用途は何かわからない。

わからないものは使ってみればわかるかもしれないので、Adobe InDesignCS6でまた試す。
□"□“□”□〝□〟□という文字列を横組テキストフレームにペーストしてみると(文字組みアキ量設定なし)、

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□3□108□122□7608□7609□となっている(ヒラギノ明朝 ProN W3)。

フォントを[A-OTF A1明朝 Std ]に変えてみると、

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□3□672□673□7608□7609□となった。

フォントを[A-OTF 秀英明朝 Pro M]に変えてみると、

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さらに[A-OTF 秀英明朝 Pr6N M]だと、

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ヒラギノとPr6NはUnicode(あるいはJIS X 0213)ベースで欧文用がデフォルト。StdとProはJIS X 0208ベースで和文用がデフォルトということになる。

これを縦組にしてみると、ヒラギノ
□3□108□122□7956□7957□
A1明朝は、
□3□672□673□7956□7957□
となった。

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お、時間切れ。
次回は謎のCIDの振る舞いと、

大石さんの

http://d.hatena.ne.jp/works014/20140529

を参考に、Adobe InDesignCCについても見てみよう。