禁則の問題、縦組中の欧文・アラビア数字の正立問題など考え中

Twitterで、いろんな議論や問題提起が行われている中で、興味を持って見ているのは、禁則の問題、縦組中の欧文・アラビア数字の正立問題、文字コードの原則「一意の符号化」が有名無実となっている問題、この三つ。

これらは無関係ではない。どれもWEB、DTP、そして電子出版における日本語の問題だから。前回書いたスペーシングの話も、また然り。以下、未整理の思いつきをだらだらと書き流すので読みやすくありません。

 

で、まず横組と縦組について。牛耕法などといった骨董品を除けば、東アジア以外はだいたい横組(ただしどちらから始まるかはまた別)で、しかも縦組を標準とする地域でも横組(左横組)が併用されている。

左横組の場合、文字の並び方、つまり進行方向は左から右へ。前の文字は左にあり、次の文字は右に来る。

縦組の場合、文字の並び方、つまり進行方向は天から地へ。前の文字は上にあり、次の文字は下に来る。

漢字や仮名の場合、前の文字が上にあっても左にあっても構わない(そうなったのは近代のことでそれ以前には天から地へと進むしかなかった)。しかし、alphabetの場合、前の文字は左になくてはならない。漢字や仮名は一字のみで語を表すことができるから縦にも横にも組めるが、alphabetは横へつながって語を表すのでそれを切り離して縦に並べることができない。

(看板などでalphabetを縦に並べる例をここで挙げるのは反則。それらのほとんどは大文字だけで一語を書いてあり、いわば一行が一字の横組にすぎない)

(V A C A T I O N in the summer time. という歌詞があり、ヴィ、エイ、シー、エイ、ティ、アイ、オ、エンと読むが、上の例はそれに近い)

横へしか並べられない文字を縦方向に組むには、組み上がった状態のまま右へ90度回転させてしまうしかない。逆に、日本語にとっての左横組は組み上がった状態を左に90度回転させては得られない。右横書きは一行一字の縦書きと捉えることができるが、左横書きはそうはいかない。一字ごとを右へ90度回転させて組み上げたものを左へ90度回転させて(ただし句読点・括弧類はまた別)ようやく横組にできるのだ。

上の場合に括弧類は天地・左右に関係なく前の文字、または次の文字との関係によってグリフが定まる。

起こしのパーレン類(〔[【〈《は、次の文字を包むように、受けのパーレン類)〕]】〉》は前の文字を包むように置かれる。そのため、回転させずに組んだものを回転すればよい。また包まれる文字とは分離禁止となる(行末もしくは行頭に配置されると包むべき文字が直後もしくは直前に存在しなくなるため)。

起こしのカギ「『〝は、次の文字の右上に配置される。受けのカギ」』〟は前の文字の右下に配置される。そして、句読点も前の文字の右下に配置される。正確に(面倒な言い方で)言えば、縦組の起こしのカギ「『〝は、次の文字の上右に配置され、縦組の受けのカギ」』〟と句読点は前の文字の下右に配置される。これをグリフで表現するときには縦組用の句読点は仮想ボディの右上、横組用の句読点は仮想ボディの左下に存在するということになる。起こしのカギが行末に来ると何に対して右上なのか不明となり、受けのカギや句読点が行頭に来ると何の右下なのかわからなくなる。

(拗促音小字も受けのカギと同じように扱われるが、とりあえず仮名であるために絶対的な禁則対象とならない)

(この考え方では中点・を行頭禁則の対象とする理由が見つからない)

 

横組の際に用いられるコーテーションマーク(引用符)シングル‘’、ダブル“”は欧文由来のもので、縦組には用いない。そこで、横書きの原稿を縦組にすることが多い印刷所では、これを〝〟に替えて組むことが一般的だった。

だからといって、JIS X 4051:1995のように(それを引用したJIS X 0208:1997も)、“”の縦組字形が〝〟であると規定するのは勇み足に過ぎた。JIS X 0213:2000では、〝〟を追加することでこの誤りを正したが、日本語名称の「ダブルミニュート」は適切とは言えないようにも見える。

さらに電子データを原稿とする際、“”をそのまま縦組で用いようとする誤りが広告関係を中心に増えつつある。しかも〝〟からの類推により起こしと受けを逆転して用いているものも少なくない。

 

さらに複雑なのは、日本語で、漢字・仮名・約物の他に、欧文・アラビア数字を和字として用いる場合があること。前回のスペーシングもその場合を問題にしたが、縦組中ではさらに厄介となる。

Adobe InDesignでの日本語組版に即して言えば、

①和字として天地方向で正立させたいものは全角形、欧文として進行方向どおりに組みたいものは半角形のテキストを用意して流す。

(和文フォントとは別に欧文・アラビア数字に欧文専用のフォントを用いるデザインの場合には成り立たない。InDesignの合成フォント機能が拡張されれば可能となるかもしれない)

②すべて半角形でテキストを用意し、和字として天地方向で正立させたいものは縦中横、欧文として進行方向どおりに組みたいものはそのままとする。(InDesignでの作業となるため、手作業で行うか、条件を設定してスクリプト処理するか、となる)

(条件として考えられるもの:和字に挟まれた1字のみの欧文・アラビア数字。連続する2字のアラビア数字。→縦中横

 2連続以上する大文字・3連続以上するアラビア数字。→縦中横して文字間に「結合なし」を挿入

 連続する欧文とアラビア数字の交ざった文字列であらかじめ指定したもの(H2、CO2など)→縦中横して適切な文字間に「結合なし」を挿入)

Adobe InDesignには「縦組中の欧文回転」という機能があるが、これを適用すると和欧文間のアキが発生してしまうので使えない。

 

(次回に続く)